【行政書士の上乗せ資格】特定行政書士、申請取次行政書士、ADR調停人、官民境界明示申請
司法書士と違い、行政書士の仕事は多種多様にあります。行政に関する申請の代理の中でも一部の行政書士にしか認められていない上乗せ資格をご紹介。広く浅くがもっとうの行政書士の業務の中でも特に専門性が高いお仕事になります。
・制度趣旨
できることが多い行政書士の業務ですが、基本的に行政書士の試験では具体的な業務の内容は問われません。試験と実務に乖離があるわけです。唯一特定行政書士に求められる知識が行政法と関わっているぐらいでしょうか。
すなわち行政書士というのは試験に合格してから自ら勉強して知識を得ないと仕事になりません。そのなかでも上乗せ資格というものがあるということは、その検定試験の内容が実務に即したものであるということ、かつ専門的な知識がない人が行うと関係者に多大な迷惑がかかってしまうという業態であるというものです。
・具体的な内容
【特定行政書士】
いわゆる審査請求という、行政処分に対する審査を求めるときにその手続を代理できるにはこの上乗せ資格が必要になります。
ではその審査請求をする場合というのはどういうものでしょうか? 行政の行為に納得がいかないと思うが審査を請求して、行政にその是正を促すことができるのです。結構レアケースな上に行政も自らの行いを否定されるので結構センシティブな状況になります。それこそ、手続き上のミスを理由に却下されると二度とその審査請求ができなくなったりするので細心の注意が必要になります。シビアな判断が求められるので上乗せ資格で実力を測るというのは必要なことだと思います。
【申請取次行政書士】
外国人の帰化申請など主に入管業務に関する事務代理ができるようになるには、この上乗せ資格が必要になります。かなり特殊な業務ですし、それなりに失敗できません。金銭面の損失だけでなく、人生そのものも左右しかねない重要な任務になりますので、それなりの専門的知識を有してないと危険ということもあります。
それに毎年逮捕者が出るほど倫理観が問われる業態でもありますからね、啓蒙活動は行政書士会としては必須業務でしょう。上乗せ資格で書士会として倫理研修などを行い、管理するのは理にかなう話でしょう。
【ADR調停人】
ほとんど世間的には知名度がないでしょうし実体上ほとんど活動していないと思われるADR調停人行政書士。紛争が起こったら要は弁護士を使う前に一度調停にチャレンジしない? という制度。
いきなり裁判に行くとお互い引くに引けなくなってしまうから、その前のワンクッションとして行政書士に依頼する・・・・わけないわけです。
そんな調停能力が普通の行政書士に備わっているわけはないので、このような上乗せ資格があるわけです。しかし、実際「ADR制度を使って調停したよ」なんていう話は全く聞かない。基本的に紛争処理能力は行政書士にはありません。もしそのような調停を行ったらすぐさま弁護士会が非弁行為として訴えてくるでしょう。
すなわち紛争解決をするのではなく、お話を聞いて頭を冷やして冷静に物を考えられるように促す程度です。もしそれで冷静に話し合いになれたときに、その結果を公正証書化して残すぐらいでしょうか。調停と言いながら本当に揉めてたら行政書士に出番はありません。たとえADR調停人でもです。残念ながらあまり実体のない制度と言えます。
【官民境界明示申請】
行政書士1条の2に記載されているように行政書士は図面の作成が可能です。そして実地調査に基づく書面とあるので測量することも暗に示されているわけです。しかし、その図面を官公庁などに提出できるのは測量士や土地家屋調査士などだけです。
なので基本的に行政書士が測量して図面を書くことができるのは民間の図面依頼だけになります。しかし、大阪府では特別に行政書士会に認定された者は大阪府に対する官民境界明示の申請を提出できます。
これは非常に珍しく、今は大阪にしかないそうです。具体的にはここからが民間の土地と公の土地境界ですよ、という境界の確定を申請できるというものです。
なので、結構シビアな測量技術が求められます。測量機器の準備を含めなかなか経験値が求められます。一朝一夕にはいかない分野と言えます。
・取得するためには
上記の様な上乗せ資格を取得するには、行政書士会の研修を受けたあとに試験を受けて、それに合格する必要があります。上記の上乗せ資格の中には十何時間にも及ぶ研修をこなさなければ行けないものもあります。
もちろんただではありませんのでそれなりに先立つものも必要です。何回も行政書士会に足を運んで、かつ試験にも合格しなければならないのは実務をこなしながらやるのは相当きついです。
では実際の試験の難易度的にはどうかというと、正直そこまではきつくありません、ほぼ全員合格するような上乗せ資格も実はあります。それでも平日昼間に何時間も行政書士会で研修を受けるという苦行を乗り切った人物なので、それなりの実力と根性があるということは担保されているわけです。
基礎的な知識やそれなりの実務に対する知識はありますので、あとは実務経験を積めば一人前の先生になれる実力はあるわけです。
・実際のところ儲かるのか?
では、その上乗せ資格を取得したあとすぐに活躍できるか? といえば間違いなく、できません。
実務に即しているとはいえ、結局は机上の空論ではありませんが、経験にまさる勉強はないということなのです。それにその上乗せ資格を持っていただけで仕事が来るものでもありません。
実務経験を得るということは士業においては非常に重要かつ、何よりも得難いものでもあります。
もし士業での独立をお考え方はその部分をしっかりと筋道を立てれるようになってから独立したほうがスムーズに行くでしょう。逆にたてれなかったら結構苦戦するということです。
結局ちょっとだけ他の行政書士とは違うんだよ、という差別化が図れるだけで、それなりに利益を出そうと思ったら営業力は必須になるということです。
・今後について
現在私が持っているものは【官民境界明示申請】のみであり、今後様々な上乗せ資格を取得する、、、つもりは実はあまりありません。
やはりそれなりに専門性の高い分野であって、いっちょ噛みでものになるものではないのです。しかし、もしお客様からその分野の問い合わせが来て対応をお願いされたら、泥縄ではありますがそのときに考えようと思います。
知識を持っていても知恵として使用できなかったら意味がありません。オーバースペックにならないように気をつけながら仕事を精進していきます。